うつ病の治療期間と回復過程、症状が生活に及ぼす問題の軽重。これらは家族の接し方に左右されると言っても過言ではありませんよね。
そうして、家族の接し方は個人の症状に応じた様々な形がある。さらに家族の生活条件も様々だから、「できること、できないこと」には差が生じるもの。
よく、うつ病の患者を支えている家族向けの情報誌やウェブページには「こういう場合にはこういう接し方を…」と記載されているものなんですが、うつ病の症状そのものが多彩で家族の対応にも差が生じる以上、 教科書通りにはいかないケースも少なくありませんよね。そう考えれば、こころの病気に関する家族の対応ルールは知ろうとするのではなく自分で作り上げていくぐらいの心構えが妥当なのかもしれません。
接し方の基本は大事な情報だけれど最後まで基本であることに変わりません。
病気や薬の知識を中心に得られた情報に合わせるのではなく、自分たちの接し方に正規の情報を付け加えていく感覚で、うつ病家族としての経験値を向上させてゆくことが望まれるのではないでしょうか。
いえ、望まれるのではなく必須事項かもしれませんよ。
考えてみれば患者の早い段階での完治や回復は、家族の心身の疲労と経済的負担の終了とも言えますからね。
さて、言わばカスタマイズされた接し方が患者の回復の一助となるのは認識したとして、接し方の精度を上げるには主治医の意見を聞き取る力が必要になってきますよね。
たとえば者の診察に同席した家族の役目は、当事者が口にしにくい内容を代弁することや、主治医の意見を直に聞いておくことが挙げられます。
ですが、代弁するにも話を聞くにも家族に聞き取る力がなければ伝え伝わる会話は成立しませんよ。
患者が言いにくいことを主治医が理解できるように伝えること。
主治医の簡素化された発言について、感情や誤情報を混じらせずに聞き取ること。
この二つはとても大事なことで、不足すると患者と家族に主治医の三角関係に信頼関係や情報共有の正確性が損なわれてしまいますからね。
妻の場合、良くない情報は口をつぐむ傾向があったんですよね。たとえば、薬の飲み心地に関することがそうです。あまり事細かく報告すると薬を増やされるのではないか?と無意識に身構えるからでしょうか……気になる点、引っ掛かる点はよほど大きな問題でもなければ非公開で終わってしまうんですよ。
そこはやはり、同席している僕が言葉を添えてやらなくてはいけませんからね。
この間処方していただいた睡眠薬は半減期が短めな気がするから少し違った薬を試してみる価値はあるかも……? とか、出しゃばらずに要所はしめる感じです。
あるいは、主治医と妻の会話にはいくつかの質問の中で繰り返されたり一歩深く訊こうとする主治医の態度に気付くことがあります。
そういう内容については、この段階の妻にとっては医療的に重要な項目なのだなとピンとくることがあるんですよ。
ピンとくるかどうかの感度、これはうつ病患者に貢献できる大きな要素ですね。
話は最初に戻って、うつ病の治療期間と回復過程、症状が生活に及ぼす問題の軽重。これらは家族の接し方に左右されると言っても過言ではありません。
うつ病は、本人の回復力だけでも治療だけでも家族力だけでも治るものじゃありません。三者の力がバランス良く働き合ってこそ、より早い回復が見込まれるはずですから。
ちょっと待って!
家族だって忙しいんだよ!仕事だってあるし、家の用事だってあるんだ。患者は治療に専念する、家族は生活支援に徹していればいいじゃないか?
だいいち、素人が治療に口出しするような真似はよろしくないんじゃないの?という意見もあるでしょうね。
でもね、うつ病は根の深い病気ですよ。
そして心の傷は家族の目には見えないのです。
だからこそ、こころの病気をあなどってはいけないのだと思います。昨日まで「最近、調子よくなってきたみたい…」と会話を交わしたばかりなのに、今日、仕事から帰宅すると「………」なんて結末をポンと差し出すような恐ろしい病気の側面を忘れてはいけないんだと思います。
どんなに罵倒されても、どんなに何もできなくとも、命がなければ治療も将来も希望も何もないんですよ。
もし…包帯ぐるぐる巻きで瀕死の重傷を負っていれば、家族は夜を徹して回復を祈るじゃないですか…。
うつ病は、そういう傷が見えないんですよ。
見えないくせに、案外、平気そうな見かけでいつもと変わらない表情で過ごしていたりする。だからボクらは病気に惑わされてしまうんです。
だからといって、なにも全面的に悲観的になる必要もない。うつ病はちゃんと治る病気ですからね。いろんな視点で病気を、患者を、家族の問題を解釈できるのが、うつ病家族の家族力ではないかと思うんですよ。
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返信削除ご主人に支えてもらえてる奥様は、きっとちゃんとご主人の心情を解ってますよ。うつの人間は、相手の気持ちにとても敏感ですから。奥様がとても羨ましいです。
家族に支えてもらえてるから、トンネルの先の光が見えてくるのでしょうね。私はまだ深い穴の底から這上がれないでいます。早く何とか地上に立ち上がりたいのですが…。
初対面なのに変なコメントですみません。
これからも奥様を支えてあげて下さいね。